詩「ビン詰めの魚」 (デイジー)

私は町へ出た
ビン詰めのピンクの魚を買った
エサも水換えもしなくていいんだって
魚が狭いビンの中を ユラリユラリ泳ぐ
小さな小さな水族館
誰かが叫んだ

「チューブ状の液体!」
「チューブ状の液体!」

もくれんの花を見た
まっしろて甘い香り
子供の頃よく目にしたもくれんは
どこか異国にいる気分になります

海へ1人で出かけた
ガタゴト電車に乗って
秋の海は少し肌寒い
波が押し寄せ
テトラポットがいつしか朽ち果てる
ビン詰めの魚とともに溶けてなくなる
人魚姫となり泡になる

永遠のループ
永遠のループ
永遠のループ

空気とともにケセラパセランが
ふわりと飛ぶ
現実と非現実
私は非現実のお姫様になった
お姫様になったら
もう海へ行くこともなくなる

でもテトラポットの前で約束した
あなたに会うために

そして夏になった
今度こそ会えるかもしれない

夏ってソーダ水に似てませんか?
シュワシュワと泡になる感ぢ
でも私はもう人魚姫のように泡にはならない
嗚呼、ソーダ水の海で溺れたい
でも約束したの
まだ見ぬあなたと

そして、また永遠のループ

いつまでもつづく
いつまでもつづく  

そして、あなたと共に
ビン詰めの魚になる






フェスボルタ文藝部

”電話一本で誰でも出られるフェス”こと『フェスボルタ』から、部活を始めます。小説、エッセイ、評論、体験談、旅行記、戯曲、インタビューetc.みんなで文章書こうぜ。

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