人混みでした人混み。
終末の終電間際の主要駅構内の、ほとんどが酔って騒いでるかそれ以上に酔って黙ってるか潰れて倒れてるか、そんな感じで真面に歩いてる人が誰もいないような人混み。
僕も相当アルコール入ってて、シャッターにもたれて睡魔&嘔吐欲と戦ってました。
向こうから、まったく同じカッコした二人の女が歩いてきたんです。
視界揺れすぎて分裂してる、って、僕も思いましたけど顔が全然違くて。でも服装を紫の長袖と辛子色のロングスカートで合わせてたんです二人とも。双子コーデって言うんですか。何が楽しいんだろうなあと思いながら、ジッと観るほどのもんでもないんで目を背けました。
そしたら反対側からも、同じカッコのコンビが来たんですよ。
紫長袖と辛子色スカートの、別の女子二人が、喋りながら近づいてくんの。
ワンペア2回はあってもフォーカード目撃は稀じゃないですか。お互い気づいてないみたいだけど出っくわしたらどうなるんだろうって、俄かに興味が湧いてきて。
邂逅の瞬間、えー嘘!とかキャー!とか吠える?もしくは何事もなかったように通り過ぎる?あるいは四人で大喜びで写真撮って顔にスタンプ貼ってインスタに挙げてライン交換する?何が起きるかなあって、天を仰いで寝てるフリして、薄目で見てたんですよね。
想像してたリアクションとは全然違いました。
出くわした二組、お互いに気づいた四人、ほぼ同時に顔を覆って泣きだしたんですよ。
声を出さずに鼻すんすん言わせて、元のペア同士で抱き合ったりして。
服が被るのって屈辱なのかな、と思ったんだけど違くて。
どうも感動の涙みたいなんです、感に堪えない、みたいな。
泣き終わった二組は、じわじわ距離を詰めていって。四人が輪になって、手をつないで。
で、パッと消えたんですよ。
僕の目の前で。跡形もなく。
幻覚、ってことにするには、あまりにリアルな体験だったんですよね。
だからそれから人混みを注視するようになりました。
3か月が経過した現在、掻い摘んで結果だけ話しますね。
白い大きめのシャツにデニムのハーフパンツ。
薄緑のワンピース。
黒いヘソ出しのチューブトップにジーンズ。
上記3組、計12人。消えていくのを目撃しました。完全に素面で。
人間って同じ服着て四人で集まって手をつなぐと消えるんだ!大発見!
と思ったんですけど。だとしたら制服着た学生やらサラリーマンやら、もっとそこら中で消えてる筈じゃないですか。まあリーマンは手を繋がないだろうけど、だれか気づきそうなもんじゃないですか。
僕が思うに、発動条件があと二つあるんですよね。
第一に、自分の意志で選んだ服を着ていること。
第二に、「自ら集まる」んじゃなく「偶然出逢う」ってこと。
「自ら選んだ」「服が被っている」「偶然出くわした」「四人が」「手をつなぐ」
そうすれば「消える」
これがこの世の真実なんですよ。
気づいてからホント、色んな疑問が一気に氷解したんですよね。
例えば僕、双子コーデって本当に意味が分からなかったんです。
他人と私服そろえる理由って影武者以外無いと思ってたから。
あれは出会いの確率を上げるためなんですよ。コンボ狙いなんです。
お互いツーマンセルで動けば一回の遭遇で消滅できますもんね。
ファッション誌がヒントを出してるんです。みんなあれを見て服を揃えてるんです。
この世界から、綺麗に消えるために。
ねえ?そうなんですよね?
君たち3人と僕は「自分の意志で選んだ」「服が被っている」。
そして「偶然出くわした」。
ここまで間違いないですよね?全員、面識はなかったですよね?
僕に拉致されるまで。
ああよかった。とうとう終われる。ついに消えられる。
ぼく、ずっと着替えてないんですよ。ホント臭くて汚くて。
でもこれでやっと、生きてる人間でフォーカードが揃いました。
手、手、手、手、繋がってますね?剥がれないですよね工業用接着剤ですからね?
喜びましょうよ。綺麗に消えられるんですよ。こんなに嬉しいこと無いですよ。
いよいよこの瞬間です。フォーカードの完成です。僕が!手を!握ります!
さあ、僕らは果たして、消えることができ
0コメント