コンビニからこんびちわ ( ぽっきー千代子 )

この春、長男が大学を卒業し、二男が専門学校を卒業し、就職した。いろいろ心配していたけど、ふたりとも私が思っているより大人になっていて、卒業式にも出られなかった私はなんか、拍子抜けしてしまったのだった。2018年の春です。


毎年、春先の私は情緒が安定していないらしい。自覚はないんだけど、若い時から言われていたので、そうなんだろうと思っていた。でも、自分でそう思わないんだから、違うんだ。最近、ひょんな事から、素敵だなと思っていた人に、思いもかけずいただいた言葉が大きい。そして、コンビニ。


私の頭の中は、たぶん多くの人たちと違う作りになっているようだ。そして、半世紀も生きてきて、いまだに自分でもどうなってるのかよくわかっていないと思う。めんどくさ草が、たくさん茂ってて、あんまりわざわざは見たくない場所だ。


長男と二男の父親と最初の離婚をした時に、いろいろな人にいろいろな事を言い含められたけど、頑としてできなかった。人格が変わってしまわない限りできないと思った。他の女の人とお揃いの指輪をつけた人とは、決着の話もする事ができなかった。そして元夫は、最後まで指輪を外さなかった。(なのに後に別の子と再婚した)


「それは置いといて」の話ができなかった事で、どうしても置いておけなくて、どうして指輪ぐらいで話ができないほどそんなに執着するのかと、おかしいと言われて、さんざん嫌な事を経て、ついには病院に行くように言われた。父に連れられて。それからずっと病院に通っている。


何を治すんだろう。やってみろ、って言われた事は、見えない橋を渡れと言われているのと同じで、たぶん自殺するのと同じ力が必要に思えた。私が、私じゃなくなるようで、最初の頃は薬は怖くて飲めなかった。だいたい身体が受け付けなかった。一昨日も、カウンセリングで病院に行ってきた。「やりたい事はありますか」「こうなりたいな、っていうのは見えていますか」って聞かれても、何も。。。今の瞬間をやっつけてなんとか切り抜けるだけで精一杯という感じ。自閉症の下の子の事を思うと、さらに未来が見えなくなる。困って立ちすくんで、なんだか久しぶりに消えてなくなりたい感情に苛まれた。


そんな時に、タイトルに惹かれて「コンビニ人間」という本を読んだ。芥川賞を取った人が書いた本だねと、長男が教えてくれた。作者の村田さんは本当にコンビニで働いていて、賞を取ってもバイトは続けると言っている様子をニュースで見たような気がする。読んでみて、なんか、なんか、なんか、まあ、漠然と思ってはいたけど、活字で書かれた、共感を覚える文字たち、私をとても元気づけてくれたよ。私、いていいのかな? この地球上に。空気を汚して、環境を使って、命を永らえていいのかな? 人間関係に影響を及ぼしても、悪くないのかな? 私を私のまま、OKと言ってくれる人は、いなかったよね? だって、普通のふりを一生懸命していたから、本当の私を知る人なんていないし、私自身も許してなかったから。私のする事はすべて誰かのもの真似。詩もね。


(普通のふりを一生懸命しているのに、どうしても「変わってる」とか言われちゃうんだ(><)


こんな私だから、あの本はとても大きかった。


そして、私も、あの本のような表現をしたいと思った。次の誰かのために。


そういえば、昔、バンドをやろうって事になった時に、リーダーにオリジナル曲のデモを渡されて困った事があった。メンバーの人たちが私にどういう風に歌ってほしいのかがわからなくて、歌えなかった。Kate Bush みたいに、とか言ってくれればよかったのに、Prince 系のダンサブルなバンドって言われて、私女だし、リズム感ないし、幼児体型だし、頭の中も子供のまんまだし、Prince のファルセットっぽく歌うのはできるだろうけど、性別が違うという事だけで、どうしても思考がそこから先に進めなくなって、どうしても駄目だった。とても悲しかった。その時に言われた言葉が忘れられないけど、今はまだ言葉にできないようで、手が止まってしまう。


生きていていいという代償に、娘、姉、友達、学生、お仕事、先輩、女である事、嫁、お母さんである事、そんな事でなんとか無理な言い訳しながら今日まで生きてきた。だけど、もうすぐ、お母さんの仕事も終わってしまう。私は、私である事だけで、生きててもいいのだろうか? 今では仕事もできない。しかも、障がいのある子を生んでしまって、しかも、自分も障がい者になってしまっている。生きてるだけで、みんなに迷惑かけてる、罪悪感いっぱいです…(><)


でも、何かしたい。私にしかできない事。そういえば、どうせ無理だけど、いつかフェスボルタに出られたらな、って思ってたんだ。やりたい事、あるじゃん。そういえば去年、音楽だけで家庭も築いている友達のLIVEに行った時に「今は歌ってないの?」って聞かれて、歌う人だと覚えてもらえていたと、なんかすごく嬉しかったのだ。上手く歌えないのは重々承知している。でも、やろうかな、って口に出してみる。Tweet してみる。すると、いろんな考えが浮かんでくる。何を歌おうかな、とか、ただ立ってるだけじゃあれだから、踊ったりするか、座っててもいいかな、とか、誰かに手伝ってもらおうかな、とか、演奏を誰かに頼めないかな、とか。とにかく考えてみる。何かが動き出すといいな。

フェスボルタ文藝部

”電話一本で誰でも出られるフェス”こと『フェスボルタ』から、部活を始めます。小説、エッセイ、評論、体験談、旅行記、戯曲、インタビューetc.みんなで文章書こうぜ。

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